なにか美しいと感じた『センスの哲学』 [CEOと本]
センスとは何か?千葉雅也『センスの哲学』から考察する感性の正体とリズム論。音楽、ファッション、芸術、食事まで広がる「センス」の本質を探り、その捉えどころのない魅力を解説。本書独特の文体と思考プロセスを通じて得られる新たな視点と、日常に潜むセンスの発見法。タイパ文化に抗う思考の旅を楽しみたい人へ。
センスっていう言葉、不思議なものです。
私自身、よく主張するわけです。
「同じ服を着ていたとしても、センスがあるかないかは見える」とかクールぶったことを。
音楽でもセンスの良い曲と悪い曲ってありますよね。
アーティストだけじゃなくて、聴く人にもセンスが求められるわけです。
「そんな曲聴くの?お前センスねーな」っていうよく考えると意味がわからないディスです。
センスの悪いものを消費する人もセンスが悪いという発想なんですよね、おそらく。
アートでもセンスに差が出ます。
ピカソの絵をみて「子供のお絵描きじゃないか」と感じるのは定番ですが、
でもそこにセンスと呼ばれるなにかがあるわけです。
そんな謎多き有名人に挑んだのが、『センスの哲学』の著者|千葉雅也さんです。
千葉さんがウネウネとセンスを考えていく様子を楽しんでいるウチに、
自分の脳内も同じようにグルグルと回っていきます。
千葉さんは体系化した理論として偉そうに語ることもできたはずです。
でも冗長だろうと笑ってしまうような思考まで書いてくれることで、
一緒にセンスの本質に迫っていくことができるんです。
論理的でありいろんな可能性を考える姿勢は研究者・科学者のソレですが、
文章の書き方自体は色々と思考にふけっているブロガーのような雰囲気があります。
そんな独特の文体が『センスの哲学』の魅力であり、
短い時間で消費したいというタイパ(タイムパフォーマンス)文化と逆行しているわけです。
センスの哲学の内容を要約することは簡単です。
ですがタイパ意識の強い現代において、
わざわざセンスについて考え回す過程を楽しめるのが『センスの哲学』を読むことの良さです。
私は『センスの哲学』を通して、たしかに"なにか"を得ました。
新しい概念がまとまりとして思考にインストールされたような、そんな感じです。
「餃子は音楽なんですよ。」
センスの本質はリズムにあります。
音楽を思い浮かべたらすぐにわかりますね、リズムのいい曲はセンスの良い曲です。
基本的には一定のリズムとメロディーを繰り返しますよね。
ドラムの「ドン・ドン・チャ・ドン」という反復されるリズムは典型例です。
でもずっと同じものも反復というのも飽きてくるものです。
同じリズムが心地よいのですが、たまに刺激となる違いが欲しくなってくる。
そんな期待を裏切るような刺激に面白みがあり、センスへの評価が上がるわけです。
Vaundyの曲は現代アーティストでもセンスに対する評価が高いイメージがあります。
そんなVaundyは、やっぱりリズムの反復をしつつも、どこかで期待を裏切る遊び心を見せてくる。
音楽だけじゃなく、センスの本質はリズムにあると『センスの哲学』ではずっと主張しています。
その具体例で宇都宮出身(?)の千葉さんは餃子を出してきた。
ギャグなのかなと思いきや、大マジだし納得感があるんですよ。
餃子を口に入れると、まずは熱さを感じる。
そして表面のパリッとした感じを噛むと、中の柔らかい部分へ進む。
そこから肉やニンニクとかいくつかの味が同時に入ってくる。
強い熱→カリカリ感という刺激→柔らかさに向かって緩和→ミックスされた味。
これらがリズムを形成して、餃子という体験が展開されていると。
ありきたりな食レポが多いので、
新進気鋭な千葉さんの食レポには需要があるのではと感じています。
なにかがわかるはず
『センスの哲学』ほど独自性のある本はなかなか出会いません。
まずは文体が特徴的なんです。
固い本を読んだことが少ない人は、千葉さんの書き方が学者っぽい回りくどいものと感じるかもしれません。
ですがこんなに軽やかで、ユーモアを含みつつ赤裸々な口調は学者のソレとは似ても似つかないんです。
だからといって、誰にでも読みやすく簡単にした本ではありません。
簡単で読みやすい本は、思考のレベルを下げているだけなんです。
得られるものがないから、私は読みたいとは思えません。
内容も、思考も、文体もありそうでなかった絶妙なものなんです。
『センスの哲学』はそれ自体がセンスとは何かを伝えている。
人のファッションを見て、漠然と「センスねぇな〜」と思っていた自分の解像度の低さが恥ずかしくなります。
センスがなにかはわからなくても、できるだけ漠然としたセンスを捉えたい。
それにこの考え方は、私が人生の選び方で大切にしていることとも通じる部分がありました。
センスのある人生というと、飾られたものを想像してしまいます。
ですが自分だけのリズムがある、絶妙な凹凸がありながら、周りと同じ反復を繰り返しているわけじゃない。
そんなセンスを人生で体現することができたとき、そこに独自性が生まれるのかもしれません。
『センスの哲学』は役立つ実用本ではなく、
自分なりのなにか大切なものを感じられる本だと思います。
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